History

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~マグサンド販売にあたり、これまでを振り返ってみました~

  • 「磁石を愛す」と言われて育つ

私の父は磁石屋で、湯沸かし電器ポットの磁石式差し込みプラグや、牛の胃に入れるマグネット、ハンドバックの開閉磁石、また、エレキギターのピックアップマイク等の開発に携わった人間です。

湯沸かし電器ポットはその昔、赤ちゃんがハイハイしてポットの電源コードをひっかけて大ヤケドをするという事故が多発して社会問題になりました。そこで電機メーカー様から依頼を受け、磁石式差し込みプラグのポットを開発し、大反響だったようです。

父は食事の際も、どこにいても、どんな時も磁石の話をして、幼少の頃から「磁石を愛す」よう育てられました。私が大学生だった頃、父の仕事に連れだって、よく中国の奥地へ連れて行ってもらいました。舗装されていない道をガタガタ揺られながら、新しい磁石屋に出会った時はワクワクした記憶があります。そしてアメリカ、ヨーロッパ各地へ営業にもついて行きました。英語が苦手な父が、イギリス人の社長と、磁石の現物を目の前に堂々と交渉しているのを見るのはとても刺激的でした。
イギリスで下手な英語の通訳で、磁石の知識も無い上に、全くもって役に立たず、とても悔しかったことを今でも鮮明に覚えています。

  • 彷徨った20代

大学卒業後は不動産ディベロッパーに就職し、勤務のかたわら、宅建や行政書士の資格を取得。司法書士の資格を目指し、自分の事務所を開こうと勉強しました。しかしながらどうしても書士の勉強、その仕事に興味がもてませんでした。
やはり自分には演劇しかない!と、色々な劇団のオーディションを受け、大好きな演劇の道に進みました。しかし数年後、母が病で倒れ、演劇の道をあきらめ、急遽父の会社へ入社して母の仕事を手伝うことになりました。

  • 父の会社に入社、腐敗した工場を改革!

ある日、横浜にある傘下の磁石加工工場へ行くと、帰り際、神妙な面持ちの数人のパートの女性から「紀子さんこれからも毎週来てほしい。」と頼まれました。
工場は数年前から勤務態度が悪い作業員ばかりで、生産性が低く、荒れ放題だったのです。
工場を仕切っている工場長に工場が腐敗している旨を伝えると「心配しないで、大丈夫だよ。紀ちゃんには関係ないから、俺にすべて任せていればいいんだよ」と言います。父に話しても、「仕方がない、あきらめるしかない」と話になりません。
どうやら父がお世話になった長老の工場長が最大のガンで、自分の部下たちに好きなようにやらせていたのです。私の中にある、何かスイッチのようなものが押されて、それから工場長たちとの長い闘争が始まりました。

朝夕の掃除、磁石製品のアッセンブリー、梱包と発送、フォークリフトでパレットにのっている磁石の出し入れ、すべてを誰よりも一番早く確実にやってやる!っと、その頃の私は気合いがみなぎっていました。
引き出しに汚い靴下や、たばこの吸い殻を入れられたり、おもむろに怒鳴られたりもしましたが、一歩も引きませんでした。必死に磁石の勉強もしました。
そして1年後、工場は目に見える形で改善されたのです。はじめて、「仕事って楽しい!」と実感した出来事でした。
父の会社で10年ほど勤めた後、もっと自分のやり方で自由にやりたい、磁石をつかった自社ブランドを販売したいと思うようになりました。人生は1回しかない、挑戦したい!と思い、覚悟を決め、39歳の時、父の会社を辞め、ひとり起業することを決断しました。誰もが「やめた方がいい」と反対しましたが…。

私の人生の中で、最大の決断でした。

  • 起業当初の悔しく苦しい日々の連続

しかし、やはり現実はそう甘くはなかったのです。自社ブランド商品をつくるにも、まずはそのための資金を作らねばなりません。時はリーマンショックの不景気で、顧客はゼロ。毎日、ただひたすら営業。磁石を使ってくれそうな会社にメールと電話での売り込み、飛び込み営業などもかたっぱしから。門前払いはいつものことで、「女性が社長の磁石会社さん!?」と嫌な顔をされたり、泣きたくなることばかりでした。

大量の磁石を車に積んで、ずっしり重い車で静岡、名古屋から大阪、そして岐阜、北陸、長野へ行商の旅。山道で大きな猪に出会い、叫び声をあげたり、雪道で車が動かなくなったり、スピード違反でつかまったり…。

周囲の関係者たちからは「社長の娘は何も知らない、1年もたたないうちにつぶれるに違いない、いまに泣いて頼ってくるだろう」と言われていました。毎晩会社に寝泊まりして、夜はひとり布団に入って、泣いてばかりいました。絶対に倒れても起き上がる、絶対に見返してやるのだと!笑顔でいる自分、その時を想像しながら眠りにつきました。

  • ひとり何度も中国へ!

数年経ってから少しずつ顧客が出来て、従業員も雇えるようになりました。磁石の仕入れも独自でしなければと思うようになり、中国の知り合いを頼りにいくつも工場をまわりました。

中国では1985年頃から、磁石の会社がたくさんでき、その会社の選定を間違えると大変なことになるのは、父と中国をまわっていたので知っていました。何社もまわって、ようやく納得できる磁石会社と出会うことが出来、磁石会社だけではなく、樹脂、板金、加工屋等も探しました。

マグエバーは磁石を販売するだけではなく、お客様の磁石をつかったOEM商品を企画開発し、製造が出来る会社にしたかったからです。

そんな頃、中国のレアアース輸出規制もありましたが、ピンチはチャンスで、大手建材メーカーのOEM商品の製造も決まり、会社は忙しくなっていきました。

  • シリコンマグネットの開発、試行錯誤の連続

自社ブランド商品の販売もあきらめず、平行してシリコンマグネットの開発も続けていました。自社ブランド商品は、シリコンマグネットをコアにして作ろうと最初から決めていました。なぜなら世界最強と言われるネオジム磁石は磁力は強いけれど、割れる、錆びる、ズレやすい、という欠点あり、それらをすべてカバーするのがシリコン樹脂でネオジム磁石を完全に被膜した「シリコンマグネット」だからです。

しかし、その要であるシリコンマグネットがどうしてもきれいに被膜できない。また、フック部とシリコンマグネットとをどう一体化するか、デザインも決まらない。
あっという間に1年、2年、3年と月日が流れていきました。

  • 10年目で、初のオリジナル商品が完成!

結局、磁石製造国である中国では満足するものが出来ず、故あって知り会ったマレーシアの工場で一から製造することになりました。

このマレーシアで、今度こそ満足のいく商品ができなかったら、どこに行けばいいのか?また、別の工場を探して一からスタートしなければならない。果てしなく不安な気持ちになり、やはり私の考えが甘かったのだと、起業する時の孤独な思いが脳裏をよぎり、心が折れてあきらめそうになる弱い自分との戦いの日々でした。

1度目は被膜が破れて失敗。

すぐにマレーシアへ飛んでいって、金型の修正をし、なんとか3度目でやっと商品として売れるものが完成しました。
2017年9月、マグエバー初のオリジナル商品「シリコンマグネット i&jフック」の製品開発に成功しました。

玄関やレンジフード、ユニットバス等で使える、割れない、錆びない、キズつけないというシリコンマグネットでできたフックです。おかげ様でこの商品は、その年のグットデザイン賞を受賞しました。
店舗で商品が陳列されているのをはじめて見た時、感無量で、しばらくその場から離れることができませんでした。

  • 実演販売開始~楽しく勉強になった日々~

「シリコンマグネット」は、ただお店に陳列されているだけでは売れないと思っていました。世の中に無いもので、見た目が磁石ではないから、それが一体何だかわからない、すごく弱そうで、どう使うのかもわからないからです。
まずは店舗の方に商品を知ってもらう意味でも、全国の店舗で実演販売を始めました。まずは関西から、やったこともない実演販売、見よう見まねでしたが、これが結構楽しく、お客様は勿論のこと、店員さんや実演販売士さんのお話しも聞くことができて、とても勉強になりました。
そして少しずつお客様や店舗の方に「シリコンマグネット i&j フック」の良さを知ってもらうようになりました。

  • 第2弾、挟んで使う「マグサンド」を発売! 

店舗で販売していると、「家に磁石がつくところがないのよ」「どこに磁石がつくの?」といった声も多く、「磁石がつくところが減っているならば、作ればいい!マグネットで挟めばどこでもフックがつかえる!」と発想を変えました。私の家では昔からあたりまえのように、シリコンマグネットを2つ使って、フックとして窓ガラスやカーテンのタッセルとして使っていました。

2019年6月、マグエバーのオリジナル商品の第2弾として、挟んで使うマグネットフック「マグサンド」を発売しました。「マグサンド」は、おかげ様で“第28回日本文具大賞”機能分野で優秀賞を頂くことができ、発売当初から大変好評で、テレビや雑誌などでも取り上げて頂きました。

  • 磁石をつかってワクワクするものを! 

もうひとつ大切にしていることは、創業時から続けている小学校等での「磁石の授業」です。子どもたちに磁石を実際に触らせて、磁石の不思議なしくみを伝えると、目をキラキラさせて磁石に夢中になります。
磁石は黒子として生活のさまざまなところで活躍しています。日本人は磁石に深く関わっていて、フェライト磁石、ネオジム磁石は日本人が発明し、最も先進的な磁石の技術を持っているのに、多くの日本人はそのことを知りません。

目に見えない力を持つ磁石は、このIT時代の今、本当に面白い!磁石は未来を変えるものだと思っています。

これからも志を持ち、不可能を可能にする、ワクワクするものを作っていきたいとおもいます。

澤渡紀子

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